*体質(証:しょう)を見極め、からだ全体のバランスを整える“オーダーメイドの治療”**です。病名や症状名に薬を当てはめるのではなく、からだの傾き(寒熱・虚実・気血水)を評価して、最も合う処方と養生を組み合わせます。
用語注:証(しょう)=舌・脈・お腹・問診などを総合し、今のからだの状態像を示す指標。治療方針を決める基準。
漢方治療の3つの柱
- 個別化(弁証論治:べんしょうろんち)
同じ「頭痛」でも、人により原因や体質は異なります。証を立て(弁証)、方針と処方に落とす(論治)ことで、あなた専用の治療計画を作ります。 - 全体観(気・血・水と臓腑)
痛みや不眠などの“部分”だけでなく、消化・睡眠・月経・ストレス反応など全体の連関を見ます。 - 時間軸(標本緩急:ひょうほんかんきゅう)
目先のつらさ(標)を和らげつつ、根本の体質(本)を整えていきます。短距離走と長距離走を併走させるイメージです。
用語注:気・血・水=働き(エネルギー)・栄養(血液)・体液(潤い)という3要素のバランス概念。
寒熱・虚実=冷え/熱のこもり、足りない/詰まりすぎの度合いを示す軸。
西洋医学との違いと相性
- 診断の軸が違う:検査値の異常や臓器の病変を探す医学(西洋)に対し、漢方は“機能の偏り”を見て整えます。
- 薬の選び方が違う:症状名にあてはめるのではなく、証に合う処方を選択。
- 相補関係:急性期や命に関わる場面は西洋医学が主役。慢性症状や体質改善は漢方が得意。併用で効果を最適化します。
日本における制度と品質
- 医療制度:主要な医療用漢方製剤(エキス製剤)は、病院での処方時に健康保険の対象。患者負担が抑えられます。
- 教育と普及:大学医学部でも漢方教育が行われ、一般診療での活用が進んでいます。
- 品質管理:製造はGMP(医薬品の製造・品質管理基準)に則り、成分・含量・安全性が厳格に管理されています。
注:当店で取り扱う漢方薬は、信頼できる製造元の医療用製剤を中心に、品質を個別に確認のうえ採用しています。
エビデンス(根拠)の考え方
- 漢方にも、ランダム化比較試験(RCT:公平性の高い比較試験)や観察研究が蓄積されています。
- とはいえ、完全に同じ処方が全員に当てはまるわけではありません。体質・生活背景により反応が異なるため、**“個別に効果を検証”**しながら最適化します。
- 当店では、根拠の強さ(エビデンスレベル)と臨床経験を併記し、期待できる効果と限界を明示します。
用語注:RCT=参加者をランダムに割り付けて、治療の有効性を客観的に比べる研究デザイン。
どんな人に向いている?
- 病名は付いているが、体調の波に困っている方
- 冷え・のぼせ・むくみ・疲れやすさなど体質的な悩みを抱える方
- 症状を抑えるだけでなく、土台(体質)から整えたい方
どれくらいで効果が出ますか?
目標や体質により幅があります。急性症状は数日、慢性症状は数週間〜数か月の見立てが一般的。毎回、指標(痛みスコア・睡眠・便通など)で経過を確認します。
病院の薬と一緒に飲めますか?
併用できる場合が多いものの、相互作用や重複作用に注意が必要です。担当医の治療方針を尊重し、情報を共有します。
安全性は?
体質不一致による副作用(例:甘草によるむくみ・高血圧傾向)を避けるため、少量から開始し、血圧・むくみ・睡眠・便通などを定点観測します。
最後に
漢方は「がまんして長く飲む薬」ではなく、体質と生活をチューニングして、暮らしの質を上げる技術です。あなたの“からだの物語”に合わせて、無理のない一歩からはじめましょう。
注釈索引(専門用語)
- 証(しょう):今の体質像。治療方針の基準。
- 弁証論治:証を立て(弁証)→方針・処方に落とす(論治)。
- 気・血・水:働き/栄養/体液の3要素のバランス概念。
- 寒熱・虚実:冷え/熱のこもり、足りない/詰まりすぎの度合い。
- 標本緩急:目先のつらさ(標)と根本(本)を、急がず適切な順序で整える考え方。
- GMP:医薬品の製造・品質管理基準。安全で均質な製品のためのルール。